INTERVIEW

河合一尊×小田晶房

2012年5月20日、『りぼん』発売記念イベント「小宴会」は渋谷にあるなぎ食堂にてひらかれました。オーボエの町田大庸氏を迎えて、倉林がチェロ、黒岡はマイクレスという特別編成で四曲を披露したホライズン。(映像はこちら)対談第二弾はその宴会のあとに。りぼんの発売元compare notesのレーベルオーナーであり、なぎ食堂店主の小田晶房さんに、ホライズンベース担当河合一尊とおはなししていただきました。


一同:おつかれさまでした。
河合(以下 河):今日はこのような場所でできてスゴイ嬉しかったです。
小田(以下 小):一尊さん今日はワーウィックじゃないんですか?
河:そうですね。ラインだったので、ワーウィックはパッシブにもなるんですけど、このベースのパッシブの音があまり好きじゃないから、こっちの方が無難かなと思って。
小:ベース何本くらい持ってるんですか?
河:一応三本あるんですけど、ほとんどワーウィックしか使ってないですね。たまたま今日使ったこれ(プレシジョンベース)に前からフラットワウンドの弦を張ってあったので、試してみたいっていうのもあって。
小:よかったですね、今日の編成にすごい合いますね、生の音に。
河:そうですね。今日はチェロとか使ったので、合わせるのによかったんではないかと思います。
小:この編成って初めてなんですか?
河:そうですね。ライブではないですね。
小:やったらいいのにね、もっとね。
河:賭けみたいな感じですけど。
小:演奏できるんですね、ちゃんとね。いや演奏できるのはわかるけど、アルバムはマルチで録ってるイメージだったから。
河:ですね。録った曲でもライブでできるというのを見せないと(笑)。
小:今回のアルバム聴いていいなと思ったけど、ライブでこの感じを再現はできないだろうなとハッキリ思ってたから、できるんだってわかって、よかったです。

河:メンバーとしてやってるのはチェンバーアナホールトリニティとホライズン山下宅配便ですね。あとサポートを少しやったり。ベーシストの厚海義朗さんのソロに僕がギターで入ったり、ceroの高城(晶平)くんのソロでベースやったり。
小:でも、うたもののバックって感じのベースじゃないですよね。
河:どうなんでしょうね、ベース始めたのがホライズンだったので、良くも悪くも普通のベーシストにはなれないかなと(笑)。ずっとギターでしたから。ホライズンに入る直前にアナホールクラブバンドにギターで誘われて、ホライズンでベースを。
小:なんでホライズンに入ったの?
河:すごいファンで、僕がホライズンの。
小(笑)何がファンだったの?
河:音楽性がすごい好きで。
小:対バンとかで会ったの?
河:その時既にアナホールに入ってたので、知り合いとして観に行ったら……全然期待してなくて行ったんですけど(笑)すごい良くて。丁度ベーシストが抜けるタイミングで、僕がベースを持っているという理由だけで誘われました(笑)。
小:アナホールには何で入ったの?
河:伴瀬とてっちゃん(倉林)が参加してたスカのバンドがあって……。
小:(笑)何それ何それ。
河:僕が入る前のアナホール三人、伴瀬とてっちゃんと田中恭平くんが別でスカのバンドやってて、まあそれは色んな人が入ってる趣味のバンドみたいな感じなんですけど、そこに誘われて初めてのスタジオの時に、アナホール入らないかと言われて。ライブが二日後とかで(笑)出会ったのが2004年とかで、アナホールも最初はブルースみたいなのやってて面白いなあと。すごい渋いのやってて。伴瀬のソングライティングは当時からすごかったです。最初はエレキ二本でやってて、結構不思議な音楽だった気がしますけど。

小:じゃあ、ベースは持ってるだけで弾いてはいなかったんだ?
河:自分の曲を作る時のデモ用というか。
小:自分の曲はずっと作ってるんですか。噂の「年100曲作曲」は本当なんですか?
河:最近はペースが落ちてますが……。
小:それはどこに発表してるんですか?
河:発表してないですね。今後どうにかしようかなとは思ってるんですけど、今んとこ発表する予定はないです。全部デモの録りためみたいな感じですね。気にいってる曲はちょっと重ねたりとか。年に数回自分で歌うとか。
小:ほんと数回ですよね。
河:年に2回とか。
小:最近はスッパ(マイクロパンチョップ)さんの企画でやってましたよね。半年くらい前か。
河:はい。あれ以来やってないですね。
小:それは積極的にやらないんですか?
河:そうですねあんまり……曲作るのが好きなので、自分で演じるのはあまり。ほとんどの曲はデモ止まりでそれが積み重なっていって、時々聴きかえして何か面白いのがあったら作り込んだりとか。
小:作り込むのはひとりで、かなり宅録重ねていく感じ?
河:いや、そこまでは……意外とバンドサウンドっぽくするのが好きなので。ドラムとかは入ってないんですけど、ライブでできそうなくらいの感じの宅録が好きです。

小:もともとはどういう音楽が好きなの?
河:僕はビートルズが好きで、そこからいきなり音楽が始まったというか。音楽はむしろ全然好きじゃなかったんです。流行りものの、テレビ番組で流れてるようなものには興味がなくて、でも小学生高学年になるとまわりでそういう話になるのでそれがイヤで。ひねくれた子供だったんですね。
小:体育会系だった?
河:中学は野球やってました。
小:ホライズン野球多いね!
河:そうなんですよね。高校は陸上で。
小:陸上は中距離?
河:そうです!よくわかりましたね。野球が全然上手くならなくて、足ばっかり速くなっちゃったので(笑)今でもたまに走ったりしてます。
小:それで万歩計!?(一尊は当日のイベントで自宅からの歩数を発表した)
河:いや、それは僕、靴がすごい好きで、どれくらい歩いたら靴がダメになるのかってのを調べてるんです。
小:毎日記録してるんですか!?
河:そうですね、一応エクセルみたいなので、2年くらいつけてます。
小:統計をとりたい感じなんですか。ほかには何を?
河:最近はその靴履いた回数と歩数と、あとiTunesで聴いた回数を月毎に記録してます。
小:表とかみるのが好きなんだ。わくわくする表とかあります?
河:地図は好きです。東京の地図とか、Googleマップはなんていいものができたんだろうと。ずっと見ちゃいますね。
小:見始めるとずっと散歩しちゃうよね。あとは?とっている統計は?
河:そんなもんですかね。これ以上増えちゃうと大変なんですよね。
小:靴の減りはどうなの?
河:そこまで履けなくなった靴がまだないんですが……五万歩歩いたら減った感があるってことがわかってきました。
小:五万歩ってどれくらい?
河:しまうまの時が三万歩でした。
小:音楽聴いた回数はiTunesに出るもんね。
河:あれも、またなんていいものができたんだと……MD時代は全部手書きでしたから。
小:(笑)それはどういう……
河:読み返すと当時自分が影響受けてるものとかわかって面白いんですよ。
小:じゃあ、曲を記録した日記みたいなものがあるんですか?
河:あります。曲を作り始めた一曲目から、曲の番号とコード進行と簡単なメモみたいなのをつけたノートがいっぱいになってます。
小:曲目は品番みたいな?
河:タイトル付ける場合もあるんですけど、番号の方があとでわかりやすいんですよね。今はデータ化して、最初は録音できるウォークマン、それからMD、デジタルになってiTunesにうつして。
小:番号なら検索してすぐ出て来るもんね。どれくらいあるの?
河:高校時代から1580くらいあります。使えないものがほとんどですけど。使えそうな曲はメモに記しを付けておいて。
小:今ならiTunesで☆付けるみたいな。自分のリスティングがそのままiTunesに活かせるんですね。iTunesの項目で欲しいのとかあります?
河:歌詞入るといいなとは思います、同期までしなくても。
(※実際はiTunesでは歌詞を入れることができます。)
小:『りぼん』に一尊さんの曲入ってるじゃないですか。そこからひっぱりだしたの?
河:別です、あれには番号はないです。ホライズンに関してはそれとは別なので管理する必要がないです。
小:ずっと無軌道に作ってるんじゃなくて、ノートと音源で管理してたんだ。
河:溜まってくのが好きだったんでしょうね。小学生のころスラムダンクが流行って、フリースローの成功率を600回くらいとってました。統計をとってくのが、好きなんですね。

小:作ってきた曲で自分が気に入って作り込むものは、どういう感じの曲なんですか?たとえば何っぽい、もしくは何っぽくない。
河:ルーツとしては60年代のロックが好きです。ああいう感覚のメロディーって好きなんですよね。ビートルズとかクリームとか、あとは今回のイベントの告知で小田さんが書かれていたバーズとかも好きで、あれはアメリカですけどあの辺の時代のロックですね。
小:でもベースはちょっと違いますよね?
河:どうなんですかね。僕自分のベースがどうなのかってよくわかんないんですけど、どうなんでしょう、ビートルズっぽくないんですかね?
小:ないですよ。もちろんポールっぽいメロディいくつかありますけど、あれはみんなやっちゃいますもんね、好きだったらね。ザ・バンドとかファンキーじゃないですか。アメリカ・カナダ的なロックバンドって印象ですけどリズム隊はファンク色が強かったり。ああいうのに近いかなと。
河:そうなんですか。ザ・バンドはそんなに聴いてないんです。聴いてみます。僕一人すごい好きなベーシストがいるんです、フリーってバンドのアンディ・フレイザー。
小:アンディ・フレイザーもロックっぽいですよね、そんなにファンキーな雰囲気ではない。
河:コピーとかはしてないんでフレーズにそこまで影響は出てないですけど、音色とかが好きで。トレブリーな感じで、浮き出てたりとか。僕も高音のほうとか弾いちゃいがちなんで。ギター弾いてたんで弾きたくなっちゃうんですよね。
小:裏メロとか結構弾きますもんね。ホライズンの中ではベースの指定あったりするんですか?
河:最近はないですね。最初の頃だけでしたね、あったのは。
小:みんな出し入れはしっかりしてますよね。バンと出る人が出る感じがあるじゃないですか。伴瀬くんとか思ったより出ないし。
河:最近そういう傾向があるかもしれないですね、すごく渋くなってきてます。メリハリというか、バンド全体として。
小:今日とか聴こえないくらいでしたね、ギター。
河:今日はチェロとのせめぎあいがあったみたいです(笑)。

小:倉林くんは関係ないですからね、ほかのひとなど。リズム隊で一緒に考えたりすることあるんですか?
河:ないですね。
小:ないですよね、それは(笑)。
河:てっちゃんは良いことをすればのってきてくれるし、こっちがだめだとダメになっちゃう。いい時はすごい良いドラム、相乗効果というか。それはリズム隊だけじゃなくて伴瀬も黒岡くんも含め。
小:ホライズンてアイコンタクトしないですよね。
河:しない美学みたいなのあるかもしれないですね。曲にもよるんですけど、黒岡くんというすごい存在がいるので……。
小:バンドの中では黒岡さんていうのは「カリスマ」なんですか?人間的に尊敬するとかそういうのと関係なく。とりあえずこの人についていこうっていう気持ちはあるんですか?
河:それはまあ、あると思います。黒岡くんがとにかく暴走して、それに対するみんなのレスポンスのようなものが音楽になってるのかなと。彼が変なこと言って、みんながわーわー言って、方向性が決まるみたいなところがあります。
小:そんなに寄り添わないですよね?伴瀬くんがちょっとだけ近くに寄ってるくらいで。
河:それは確かにそうですね。みんなでわーって盛り上がる感じではないですね。
小:その距離感は練習の時からそうなの?
河:ほぼ一緒だとは思います。
小:「ああ失敗してる」っていう時もあるじゃないですか。空回りしてるみたいな時は、どうするの?
河:基本的に放置してますね(笑)。それも楽しんでるというところもあります。昔は伴瀬も黒岡くんと張りあって変なことやりたがってたんですけど、最近は黒岡くんに暴走してもらうだけしてもらって。そのほうがわかりやすいのかなと、観てる人たちも。それで反応とかも良くなってきて、方向性が見えてきてるんだと思うんですよね。わかりやすくなったんだと思います。昔は伴瀬も変なことやりつつ、でも演奏自体はちゃんとしてるから、観てる人は結構ポカーンとなっちゃうんです。なんかエキセントリックなバンドだなーとか。最近はパフォーマー黒岡に、バックはちゃんとした演奏、という形がある。
小:一尊さんのその中での自分の立ち位置は?たとえば野球なら黒岡4番、伴瀬1番。倉林くんは指名打者じゃないですか、守備には参加しない(笑)。
河:つなぎのとこだとは思いますけどね。中継ぎとか。2番バッターとか。
小:でもここらへんに回りたい、みたいなのはないの?
河:うーん。あんまりないですね。何もしないのが合ってる人というか。
小:できれば毎回バントがいい?
河:そんなことはないかもしれないですけど、ベースというのが僕の中でいまだにわからない楽器というのがあって。コーラスとかもあまりやらないし……。
小:今回ちょっとだけ歌ってるじゃないですか。(『ロートホルン』)
河:あれはその場のノリで決まったんですけど。あの曲は昔からのライブの定番なので、そのままやったんじゃ面白くないと。もともとアコギ一本で黒岡くんが歌う予定だったんですけど、準備が間に合わなくてああいうアイディアが出てきたんですよね。僕とてっちゃんが一回辞める前、7年くらい前からやってる曲なんです。

小:なんで辞めたんですか?
河:そうですね……当時ライブをガンガンやってて、月3、4本とか。CDも一応作って。でもこのまま行ってもあんまり何にもならないんじゃないかと……。
小:(笑)何にもならないってそれはどういう感じですか?倉林くんは店やらで忙しくて、というのはわかるけど。同じタイミングで抜けたの?
河:そうです、同時に抜けて。
●黒岡さんと伴瀬さんに不満などがあったのでは……。
河:そうですね、昔の方があの二人は……これはまあ載せないとして……
小:そこがおもしろいんじゃないですか、なにを言ってるんですか!
河:(笑)昔のほうがこうやれこうやれって、フレーズ自体の指定が多かったりとか。まあ、あんまり面白くなくなっちゃったんですよね、そこに居ても。「二人でやれば」って思ってしまったんですよね、僕が。
小:二人の世界観に合わせられてた感じがあったんだ?
河:そうですね……それにお客さんにそこまでウケてなかったんですよね。
一同:(笑)
河:当時のライブってお客さんは知り合いばかりでファンが増えてる感じがしなかったんです。
小:でもスターパインズのワンマンで100人呼んだんでしょ?
河:あれは無理矢理知り合いを集めて。
小:倉林くん鼻高々で話してたけど(笑)。
河:頑張って呼んだんですよ。その前後のライブにはお客さん来てないですからね。今思うと中途半端なバンドだったと思うんですよね。すごいぶっとんだことやるバンドなのか演奏みせたいのかどっちなのかって。対バンでぶっとんだバンドがきちゃうと萎縮しちゃうみたいな(笑)。
小:一尊さん全部わかってたんや。でも何も言わなかったの?
河:言ってたとは思うんですけどね、ちょくちょく。でも話し合いは今ほどしてなかったし、言うのもけっこう覚悟がいるので。険悪になるし、面倒くさいなというのはありました。
●戻ったのはどんなきっかけで?
河:抜けた後も年末だけは4人でライブやってたんですよね、年末恒例みたいな。
小:年末だけ?(笑)。
河:年末だけ、細々とやってたんですよね。そのころ片想いと仲良くなって。
小:4人でやってるときはとんちれこーどはあったの?
河:『マイクロホンレコード』でしたね。僕らが抜けたころにレーベル立ち上げとかの話になって、片想いのメンバーが二人ホライズンのライブを手伝ったりとか。
小:観に行ったりはしてたの?
河:いや、全然。そのころは僕、とんちとは疎遠でした。
小:あれ、アナホールは?
河:そのときはもうやってなかったです。二人ホライズンでは『りぼん』に入ってる『風呂の歌』とか『あかいあかい』をオーボエの大庸さんとか呼んでやってたりしていて。その時に何かのタイミングでゲストとして呼ばれたんですよ。それで聴いたらすごいかっこいい曲やってんなって。『ハコビヤ』とかも。これは凄いなと、辞めた頃のバンドサウンドのものより面白いことをやってるなって。
小:それまでの曲とは違ったんや。
河:編成がそもそも違うというのもあったんですけど。4人の時代の曲はほとんどやってなくて。
小:ケンカをしたわけじゃなかったんですね?
河:そういうのはなかったです。一応、何回か話し合って今度のライブで終わり、みたいな。
小:抜けた2年ぐらいは何してたの?
河:バンド活動はしてなかったです。今より仕事が忙しかったりで。
小:ホライズンに戻ってからは、どうなんですか?
河:みんな割り切ってるというわけじゃないんですけど、なんでしょう、黒岡くんが気を遣って民主的にしようとしてくれてる気がします。
小:前と違うんや。
河:話し合いは増えました。
小:その分任せてくれてる部分もある感じ?
河:黒岡くんは残りの三人に音楽に専念できるようにしてくれてますよね。イベントに関しては一手に引き受けてくれたり。

小:ライブで黒岡さんが妙に盛り上げようとしてるのを見たくない、というのを言ってた方がいたんですが、一尊さんはどう思います?
河:僕は全然いいと思うんですけどね。
●『期待』をアンコールでやるのとかどうなの、みたいな。
河:『期待』をシングルで出したのと一緒で、「そこは我慢」だろっていう。
小:我慢ていうと?
河:知ってる人からしたらもういいよ、ってなるけど、まだホライズンを知らない人がいるわけじゃないですか。もうしばらくベタなやり方をしないとダメだと。やり切らないと次に行けないような気がします。
●演奏は飽きてるんじゃないかと。
小:そりゃ飽きるでしょう。
河:麻痺してます、何も感じなくなりましたね。『期待』が脚光をあびつつあるときが一番ツラかったかも。やんないライブあってもいいんじゃないかと言った覚えはありますね。でも黒岡くんが、いや、やる、って強い意志を持って、そこはやり続ける、と。
小:シングル出す前の盛り上がりってあったの?
河:ダンスは話題になってましたね。
小:そこら辺のころが一番きつかったんだ。
河:単純に飽きてるっていうのもあるし、ベーシスト的に言うとあれはほんとに疲れる曲で。休むところがないっていう。あの曲のおかげで結構鍛えられたっていうのはあります。今となってはやりたくないとかはないです。
小:ああいうのがまた二曲くらいあればまたね、可笑しいかもしれないですけどね。
河:そうですね。
小:踊ってなんぼというバンドではないですからね。
河:そうなんですよね。こないだ伴瀬と話してたんですけど、「お客さんムリヤリ踊らせてるってのは踊れない証拠だよな」って。
小:(笑)それはでも、いい話ですね。
河:踊りたいのに踊れないっていう意見はお客さんからききますね。踊りたい瞬間があるのに踊らせてくれない、展開変わっちゃって(笑)。

●そもそも何故小田さんがcompare notesからホライズンを出してくれたのかというのを(笑)おききしたかったんです。
小:急に倉林くんから今日行っていいですかって電話もらって。来て、何かなと思ったら「出してください」って言うから、「いいですよ」って。
●(笑)ホライズンは聴いてくださってたんですか?
小:聴いてましたよ、すごい好きだったし。円盤ジャンボリーで初めて観て。とんちがいっぱい出てるので少し見たのと。とんちでやってるライヴの方が印象が強いかな。倉林くんが働いてた時に店で聴いてて音楽的にはすごい好きで。特にあれが好きですね、ピアノでやってる……。
河:ああ、『たまてばこ』。(アルバム『玉手箱博覧会』演奏はほぼピアノのみ)
小:あれはすごいですね。
河:僕はあのライブで初めてホライズンを観たんですよね。
小:すごいですよね。名古屋であれを再現したの?
河:名古屋ではバンドサウンドでした。僕がみたときもバンドサウンドで、あとからアルバムを聴いたら、かっこいいなと。
小:よく店でかけてます。
河:あれはすごいですよね。
小:あれだけで色んなものを説明できるし。そのあとによくわかんないものがいくつか出てるから、何なんだろうなーって思ってね。あとは、不遇な感じがしたんですよ(笑)。
●ばれてますね。
小:そういうものってまわりにたくさんあって。俺はもともと京都でイベントやったり飲み屋で働いたりしてたんですけど、ふちがみとふなととかpopoの喜多さんとかmama! milkのコースケとかいつも一緒に遊んでて。そいつらすごい、いいんですよ。いいんだけど、関西にいるってだけでまったく評価されなかったんですよ。伝わらなくて。東京に出てきた時に周りのやつらだけでも紹介しようって、誰か紹介する人がいたら少しは状況が変わるかもしれないなというのがあって。雑誌に関わってたんで紹介することもできて、そうしたらいつの間にか。音楽自体が体力あったんですよね。関西にいるからってだけで評価されなかったひとたち、オクノ修さんも誰も知らなかったけど円盤の田口くんやオフノートの神谷さんに紹介したら広がって。誰かが違う間口をあけると変わることもあるだろうなって、俺じゃなくてもいいんですけど。
逆に東京でもそういう人たちは何人かいるよなと。いいし、面白いし、すごいんだけれどもちゃんと伝わり難い、けどそれは間口ひろげればいいだけのことだというのは、常にあるんです。倉林くんから話が来たときも、間口ひろげることはできるかもと。売れるとは思ってないし、売れるって感じのバンドでもないと思ってるから(笑)ただちゃんと音楽を続けていける環境になればいいなと思ってるんですよ。

小:一尊さんは何が好きなんですか?ホライズンの。
河:黒岡くんと伴瀬の化学反応が起こった時の音楽性ですかね。ただ音楽の才能があるだけじゃないし。ビートルズを最初に聴いたときの感覚に近い気がするんですよね。二人の化学反応というのは。あの二人はひとりずつでも凄いんですけど、ひとりずつで出会ってたら僕はなんとも思わなかったかもしれない。でもあの二人が一緒になると曲のメロディにしろ歌詞にしろ世界観にしろ、特別なものがあると思う。最近そのへんが薄れてきてるかなと。
小:ロックバンドに寄らない感じで曲作ってる気がしますもんね。
河:あの二人がほんとに集中してる時は中に入れない雰囲気が以前はあって。
小:入れないぐらいのほうがいいの?
河;それはそれできつかったですけど、それで出てくるものが凄ければ。
小:今のパターンはいいバランスだと思いますけどね。
河:そうですね、続けていくには丁度いいのかもしれないなと。
小:ライブで倉林くんのドラムがかっこいいとか一尊さんのベースがいいとか、伴瀬黒岡だけじゃなくなってるのはいいなと思います。
河:それがわかりやすさに繋がっているとは思うんですけど、もうちょっと戻ってくるといいなという願望があります。
小:もうちょっととんでもないものが出て来るといい?
河:そうなんです、『イカレコンマタヒラ』はそういう匂いが。正直最初聴いたときは意味わからなかったですけどね。
小:今でもわかんないもんね。でも今日リハで聴いた瞬間、いい曲やな!って。
河:ヘタしたら結構泣けるくらいの。そういうのを伝えられたらいいなと。
小:あんなよくわかんない歌詞なのに泣ける、っていうね。
河:僕がホライズンに最初に感じた印象かもしれないですね。これを聴いて泣くか笑うかという。『イカレコン』はまあ、ほんとに分かりづらいかと思いますけど。
小:最初聴いた時は『あかいあかい』が一番衝撃でしたね。
河:黒岡くんの気持ち悪さみたいなのが出てますね。『りぼん』のPV(「千里の道も散歩から」)の最後に使われてるのも、異様な感じ。
●あれは凄いですね。終わった時寂しくなるし。
小:終わったら寂しくなる感じっていうのはすごくあって、その感じが気持ちいいって思う人と思わない人が世の中にはいると思うんですよね。俺とかは聞き終わって寂しくなる感じのほうが好きだったりするけど、そういう音楽は基本的にはポピュラリティは得られないんでしょうねえ。
河:確かにそうですね。BGMにならないですもんね。
小:聴いて元気になるほうをみんな求めちゃうもんでしょうね。
河:『りぼん』は聴いたら内向的になっちゃうのかな?聴きながら洗濯物たたんでたらすごい哀しい作業をしているような気持ちになったり(笑)。

小田晶房(おだあきのぶ)
渋谷でヴェジタリアンのオアシス・なぎ食堂を切り盛りする表の顔と、レーベル「compare notes」主催という裏の顔、そして企画・編集チーム「map」の構成員として夢想する顔を持っている(が、いつも焦ってる)。
(ある視点から見た)まともな音楽の世界を夢見つつ、日々、悪態を吐き続けている。
今日も夜な夜なよからぬことを考えていると……おっと新たな依頼が舞い込んだ。
mapupnews http://mapup.net/
なぎ食堂 http://nagi-shokudo.jugem.jp/

(TEXT:とんちれこーど)