INTERVIEW

ホライズン山下宅配便

ホライズンはこの四人が好きな事をやっていける場所でいたいし、それがずっと続かないといけない。
『りぼん』は四人が平等なスタートラインに立ったアルバムだな、と思っています。
唯一無二のパフォーマンスと確固たる音楽性の絶妙なバランスを持つホライズン山下宅配便
アルバム『りぼん』の完成度、構築度の衝撃を今こそ「目撃」してほしい
四人にアルバムについてじっくり語ってもらった
こちらは、『りぼん』発売当時(2012年5月)にQuip vol.68に掲載されたインタビューをweb用に再編集したものです。 こちらのインタビューの番外編(本誌掲載時にカットになったもの)はこちらからごらんください。
ホライズン山下宅配便『りぼん』発売記念インタビュー[中華街番外編]

L → R
倉林哲也 Drums & Chorus/黒岡まさひろ Vocal/伴瀬朝彦 Guitar & Chorus/河合一尊 Bass & Chorus
写真・鈴木竜一朗
『2012年2月29日ホライズン山下宅配便のレコ発なのでしまうまが歩きます 新宿から吉祥寺まで』より[twitterまとめ]
●今日はよろしくお願いします。バンドの成り立ちと名前の由来について教えてください。
伴瀬朝彦(以下 伴):はい。よろしくお願いします。元々ライダーキックというバンドを黒岡、伴瀬、倉林、田中(恭平)でやっていて、それがホライズン山下宅配便になり、2005年に田中脱退、(河合)一尊加入で今のメンバーになりました。一時期は倉林と一尊が脱退して、黒岡、伴瀬で活動していましたが、二人が復帰して、今は四人で活動しています。
●ありがとうございます。バンド名については?
伴:かかってきた電話に架空の名前で出る、っていうのが日常で、その中の一環として、ホライズン山下宅急便というのが黒岡から出てきて、それをそのまま採用してしまいました。(※2004年に宅急便から宅配便に改名)
●なるほど、突発的に命名したと(笑)では早速アルバムの話を。
伴:大体名古屋に行く度に、黒岡がレコーディングしたい、アルバム出そうって言い出して。
黒岡まさひろ(以下 黒):二人時代の曲でレコーディングしてない曲がたくさんあったんです。
伴:当時、ゲストを入れて大編成でやってた時があって、その時の音源がないのが惜しい。なかなかライブで再現することが出来ない曲だし、それこそライブじゃなくて音源で出すべきじゃないか、ということで、そういう曲を中心に選びました。見せ付けてやるようなアルバムにしたらいいんじゃないか、って。
●音楽的な完成度、構築度を見せ付けると。
伴:はい。あと、あえてポップではないものにしよう、と思ってて。そういうものを集めて、どうですか!と見せたかったんです。ここいらで、そういうことをやってもいいんじゃないかと。
●目に物みせてくれる、と。
伴:はい。
●かましましょう。制作期間は?
伴:去年の夏から録り始めました。アルバム制作中に、先にシングルを出そう、ってことになって、シングルも後から録りました。それは2月29日に出た『期待』というシングルです。
●タイトルの『りぼん』は、これはどういう理由で?
伴:未発表曲の『ガラスの階段』をアルバムのメインにして、そこからタイトルを連想していこうって感じでした。
河合一尊(以下 尊):マンガのタイトルみたいな。リボンの騎士とか。
伴:『オクリモノ』と『騎士』があるから『りぼん』とか。シンプルなのがいいだろうってことで。
黒:英語かカタカナかひらがなか考えて。結局ひらがなの『りぼん』になりました。
●なるほど。では、各曲についてお願いします。
オクリモノ
黒:これは怖い曲だ、入れる場所がないな、って皆ですごく迷って、結局最初に入れちゃいました。プロローグ的なイメージです。
伴:シークレット・トラックにするか、とか、ボツになる案もありました。一番目に入れた事で、何が始まるんだ?!って空気を醸し出せるかな、と。
尊:タイトル的にも『りぼん』だから、一曲目『オクリモノ』っていうのはいいんじゃないかな。
伴:それもある。曲のタイトルが『オクリモノ』じゃなかったらまずかった(笑)これは黒岡と二人暮ししていた時に二人で作ったカセットMTR時代の曲だね。それで、二人時代のオーケストラ編成の時に、この曲を思い出して。あと、これはドラムがすごいイレギュラーな感じで入ってますね。
倉林哲也(以下 倉):最初、普通だと思ってて。頭の中にあったリズムをその通りに叩いてたんです。
黒:あれが普通なのか。
伴:また天才だから。
黒:でもすごいよね。伴瀬と一尊が4で進んでたら、倉林は6とかで進んでて、全然違うんですよ。
伴:ポリリズムを、やってみました。最近覚えました。
尊:録音スタジオの松石ゲルさんは疑ってたね。これ本当にポリリズムなの?って。
伴:一番最後でぴったりリズムがあうんですけど、そこに向けてずっと進んでいかなくちゃいけないから、最後の緊張感たるや。
点ブレイク
伴:10年前くらいに黒岡とつくりました。
倉:これは前のバージョンも一応録音ありますね。
伴:『大阪公演によせて』(2003年)とかに入ってたような。
●ホライズンの前身バンド、ライダーキックのですね。
黒:そうなんですよ。倉林が専門学校で得た知識をフル活用して録音した物をミックスしてくれて、その時すごい感動しました。メンバーの演奏以外にも倉林さんが色々重ねてて、それがすごい良くて。これは大阪でライブをする時のために作りました。伴瀬は大阪ライブに自転車で向かってて。
●自転車で大阪ってすごいですね!
伴:若いから、時間かけて一週間で。着いた喜びで満足して、ライブは散々でした。
●(笑)
伴:一週間かけて大阪行って、メンバーと落ち合って、その感動で何かが起こっていいライブができるんじゃないか、って思ってたんです。若気の至りです。結局何も起こらなかった。
倉:曲すら決めてなくて、一曲終わった後、皆で何やろう?って感じで(笑)。
伴:全体の空気がすごいどよーんとして。あと俺何故かキーボードだったんですよ。
倉:俺そのキーボード、高速バスで持ってったんですよ。自分のスネアは置いていって。
黒:……まあ、思い出深い曲です。
伴:人生最低最悪のライブの思い出です。
オリンピックの前日
黒:伴瀬に曲をつけてもらう歌詞の中で、曲つけにくい、って残ってたのがあったので、一尊この中から曲をつけてよ、って。
尊:用事があって黒岡くんの家に行った時に、歌詞がいっぱいある、って話を聞いて、じゃあ、って。
●これはあんまりない組み合わせですよね。
尊:初めてですね。
伴:あんまりないから、やってみようってなったんです。
黒:皆メロディが独特なので、とても面白いです。次のアルバムではまた一尊とやりたいと思ってます。
伴:これは実はキーがちょっと低くて、でも上げたらちょっと高くて。だから歌いづらい。それであんまりライブでやってないのか。
尊:そうだ。四人でスタジオ入ったらアレンジがいい感じに仕上がって、その後キー問題は忘れられてしまって。結局キーはそのままでライブでやってたような気がします。そしてアルバムにも入ってしまった。あと、てっちゃん(倉林)にチェロを弾いてもらったんですが、それがアルバムでの試みというか、この曲の聴き所の一つになったかな、と。
伴:基本作曲者がフレーズを考えてます。この曲に関しては一尊が。
ロートホルン
倉:これ、題名だけもらったような気がする。
●題名だけもらって作るのはよくある作曲方法ですか?
伴:ホライズンの手法としてはオーソドックスな感じですね。てっちゃんのデモを聴いたら、弾き語り用の素朴ないい曲で。アレンジは結構苦戦した記憶がある。
倉:でも意外とそのまんまだと思って。
伴:そのまんまになったかね。これは苦戦したあげくキメキメになったね。この曲は、珍しく演奏中の遊びが殆どないです。あと、コーラスとかもすっげえ練習したよね。今でこそそうでもないですけど、昔はコーラスの練習ばっかり一ニ時間ずっとやってたことがざらにあって。
倉:ここら辺の時期までのコーラスはあまり意識しなくても大体できる。
伴:練習のかいがあったよね。この曲は皆目をつぶっててもできるんじゃないかね。
●ホライズンの巧みなコーラスワークは練習の賜物だったんですね。
伴:はい。
倉:歌詞は、黒岡さんが歌うだろうから、恥ずかしくなるような歌詞にしようと思って。
黒:てっちゃんの歌詞だけど、俺が作った、って言われたりしますね。妻もいて子供もいて、って歌詞ですが、その頃は妻も子供もいなかったんです。
伴:先見の明があった。
黒:心象風景という感じの歌詞も好きです。あと、特に好きなのはですね、ギターのリフとかメロディです。あれを聴くと背筋がぞくぞくぞくーってくるんです。
●相当お好きなんですね。
倉:そういえば、録る前日くらいまで、黒岡さんが弾き語りすることになってて(笑)。
●それだと色々と全く違う風になりますね!(笑)。
伴:アルバム全体のバランスを考えてちょっとゆるい曲があってもいいだろう、と思って。
●がっつり作りこむ曲と、弾き語りの曲と。
伴:そう。だから、黒岡が弾き語りしたらいいんじゃないか、って言ってたんですけど……。
黒:俺、練習して行ったのに……。
伴:やっぱり名曲だから、弾き語りやめよう、ちゃんと四人でやった方がいい、って(笑)。
倉:結局黒岡さんの歌の部分も減らされましたね(笑)。
黒:お前のアイディアや!(笑)。
伴:メンバーが順番に歌った方がいいんじゃないですか?って倉林が言い出して。
●でも、全員で歌ってるのがいいなあと思いましたよ。アルバム全体でも、メンバー全員の声がよく聴こえるし。あと、全体的に倉林さんのパートがいつもより多いのかな、と思いました。
伴:多いですね。
黒:そうですよ。ボーカルは誰なんだ、っていうね……。
倉:でも、他の人が歌うっていう選択肢が出来ましたね。
尊:逆に三人の後の黒岡くんのボーカルがすごくいい。やっときた、って安心する。本来のボーカルの人が歌ってる感じがする。
●本当にそうですね。
黒:これは何回も歌ってるんで、歌いきってます。でも実は僕も、四人で歌ってるの好きですね。
伴:ライブでこれやっちゃうと、ピースフルになり過ぎるから、音源ならではにしたいですね。
尊:昔結構やってた曲だから、昔からのファンへのプレゼント的なところもあるね。四人で歌ってて。
伴:そうね。アルバムの中で『ロートホルン』は、何か安心できるポジションというか。これは重要だと思いますね。
イカレコンマタヒラ
伴:この曲こそ、オーケストラサウンドみたいな曲を、と思ってつくりました。
尊:今回の軸にしようとしていた曲です。
黒:最後まで外したかった。難しいんですねー歌うと。
伴:難しいんですよ、曲が。でも、それをやってもらうほかないので。歌詞は黒岡が基本書いて、俺が曲にあうように修正をして。歌詞が先です。タイトルは、黒岡が菊地さん(黒岡の友人)に電話をして、曲のタイトルください、って言ったら、即座に『イカレコンマタヒラ』とだけ返ってきて。即座感がよかった。すごい名曲を作ってやろうという気持ちで作りました。でも、オーケストラサウンド、クラシック寄りの曲をと思って作ったんですけど、ライブでどうやるかとか全く考えてなくて。で、ライブでやったんですが、いかんせん反応が……。
●(笑)
伴:ライブでどう見せるか、いまだにわかんないですね。
●でも、すごくライブで聴いてみたいですね。
伴:ありがとうございます。これはやりたいですね。実際ライブでやる時は、俺いらんですからね。
黒:前、伴瀬はギター弾かずになんかやってたよね。
尊:手ぶらの時もあったね。
伴:作った本人が何やったらいいかわかんないっていう(笑)でも、これはすごく見せたい欲がありますね。バンドとは別に、こういうこともできます、って。逆に、ホライズンじゃないとできないと思う。こんなわがままは。
●そうですね。
伴:前奏と後奏は一尊がこの曲の中のオーボエとかクラリネットのフレーズをサンプリングして作って。それは元々一つの曲として収録する予定だったんだけど、流れを考えて、二つに分けて『イカレコン~』を挟むことにしました。それによってこの曲の立ち位置が強調されるんじゃないかと。
尊:元々そのサンプリングの部分は『イカレコン~』の応援歌というか、この曲の名曲感を増すためにこの曲の素材だけでこんなのできましたよ、っていうのをみせる曲だったんです。
●リミックスみたいな感じで。
尊:そうですね。で、最後曲順決める際に、今の形になりました。
黒:一尊の功績ですね。それを含めて『イカレコン~』がふくらんできたかな。今回オーボエがフィーチャーされてましてね。トランペットは別として、オーケストラとはいえ、マイナーとされる、あまりメインをはらないような楽器を絡ませています。
●アルバムを通して聴いても、この曲だけ浮いているということはなくて、このアルバムに入っている意味というか意義を感じました。
伴:そう思っていただけるとうれしいですね。
黒:やったー!
伴:他の人の反応も楽しみですね。この曲が入っているのは、すごく意味があることなので。